Toma(とま)のゲーム日記

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爪楊枝ディスペンサーの歴史:食卓の小さな発明、その進化の軌跡

食卓やレストランでおなじみの爪楊枝ディスペンサー。一本ずつ爪楊枝を取り出せるこの便利な道具は、単なる容器から、衛生的で遊び心のある発明へと、1世紀以上の歳月をかけて進化してきました。その歴史は、爪楊枝の量産化と、人々の衛生観念やライフスタイルの変化と深く結びついています。

 

前史:爪楊枝の量産化と「ホルダー」の誕生 (19世紀後半)

爪楊枝ディスペンサーの歴史は、まず爪楊枝そのものの普及から始まります。古代から存在した爪楊枝ですが、現代のような木製の使い捨てタイプが広く使われるようになったのは、19世紀後半のことです。1800 年代初頭の米国で、チャールズ・フォスターという発明家が一度に数百万本の爪楊枝を生産できる機械を開発に成功したことで、爪楊枝は安価で衛生的な日用品としてアメリカ社会に浸透しました。

 

爪楊枝が普及すると、それを食卓に常備するための「爪楊枝ホルダー」が登場します。特にヴィクトリア朝時代(19世紀後半から20世紀初頭)には、ガラスや陶磁器、金属などで作られた装飾的なホルダーが数多く製造されました。これらは食卓を彩るアイテムの一つであり、今日のディスペンサーとは異なり、爪楊枝を立てて入れておくだけの単純な「容器」でした。

 

ディスペンサーの発明:衛生への配慮 (20世紀初頭〜中期)

多くの人が同じ容器から手で爪楊枝を取ることは、衛生面で問題がありました。この課題を解決するため、一本ずつ爪楊枝を取り出せる「ディスペンサー」が考案されます。

 

初期の機械式ディスペンサーに関する特許は、20世紀前半に現れ始めます。例えば、1920年にはヒレ・フランクが取得した特許(US1361857A)は、マッチを対象として説明いますが爪楊枝も含めた特許として申請しています。1928年にはジョン・ドラギーが取得した特許(US1696080A)は、容器を傾けることで一本の爪楊枝が取り出し口から出てくる仕組みでした。また、1949年のルイス・W・オーティスによる特許(US2479860A)は、レストランなどでの利用を想定し、より複雑な機構で一本ずつ供給する衛生的なディスペンサーを提案しています。

 

これらの発明は、不特定多数の人が利用する場面での衛生意識の高まりを背景に、爪楊枝をより清潔に提供するという実用的な目的から生まれました。

 

デザインの躍進:遊び心が生んだ「鳥のディスペンサー」 (20世紀中期)

爪楊枝ディスペンサーの歴史の中で、最も象徴的で愛されているデザインの一つが、鳥(特にキツツキ)が爪楊枝を一本ずつくわえて取り出してくれるタイプでしょう。

 

このユニークなディスペンサーの原型は、1933年のシカゴ万国博覧会で記念品(※1)として作られたものに見ることができます。そして1950年代になると、鋳鉄製などで同様のメカニズムを持つ製品が人気を博しました。(※2)鳥の頭や体を押し下げると、連動した内部の機構が爪楊枝を一本持ち上げ、鳥がそれをくちばしで「つまんで」差し出すという、巧妙で遊び心あふれるデザインは、多くの家庭やダイナーで親しまれました。

※1:1993年の話はこちらに記載があります

※2:上記同様のページに記載があります

 

日本における展開:おもてなしと技術革新

日本でも爪楊枝ディスペンサーは独自の進化を遂げました。昭和時代には、飛騨高山の民芸品として知られる「からくり楊枝とり」(※3)など、木工技術を生かした鳥のディスペンサーが作られ、お土産物として人気を博しました。これらは欧米のデザインに影響を受けつつも、日本の伝統的な「からくり」の要素が加わったユニークな製品です。

※3:こちらのページで詳細な紹介がされいます

 

また、飲食店ではシンプルなワンプッシュ式のプラスチック製ディスペンサーが広く普及しました。蓋付きで衛生的なこれらのディスペンサーは、日本の食卓における「おもてなし」の備品として定着しています。

 

近年では、衛生志向がさらに高まり、手をかざすだけで爪楊枝が一本出てくるセンサー付きの自動ディスペンサーも登場しています。埼玉県の企業が開発した「つまようじ献上」シリーズなどは、そのユニークな動きと非接触という衛生的な利便性から、メディアでも話題となりました。

www.asahi.com

 

結論

 

爪楊枝ディスペンサーの歴史は、単なる日用品の変遷にとどまりません。それは、大量生産時代の到来、公衆衛生への意識の向上、そして日々の生活に楽しさや驚きを求める人々の心が反映された、小さな発明の物語です。単純な容器から始まり、衛生的な機械へ、そして愛らしいからくり人形へと姿を変えてきた爪楊枝ディスペンサーは、これからも時代のニーズに合わせて進化を続けていくことでしょう。